ママでOK?

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ここで差をつける 原本照合のポイント&ヒント

国語教材における原本照合といえば、読解問題の本文とその原典の引き合わせが定番です。
国語校正なら、まずはここからスタートすることが多いでしょう。

照合には集中力や注意力、長文なら根気も必要ですが、齟齬のチェックだけなら、意外とインターンの学生でもやりこなしてしまうものです。

でも、プロなら一歩先の視点ももっておきたいところ。
以下の点も意識して校正すると、ぐっと職人らしくなるでしょう。

アキも意識する

書かれている部分にばかり気をとられていると、空白のチェックが疎かになります。
たとえば改行の頭位置。会話文の「 で始まるものは、以下の4パターンあります。
原典ではなく、編集方針に従っていずれかに統一します。

誤って、成り行き改行の頭にある 「 も一緒に下げてしまわないよう注意。

級数・書体も意識する

主にルビに該当するチェックポイント。一か所だけ級数が大きい、明朝で振るべきルビがゴシックになっている、平体をかけてツメうちしなければならないのにベタになっているなど、複数種の不備が潜みやすいところです。
照合時でなければ、なかなか気づけない部分ですから、丹念に拾って後の工程に持ち込まないようにします。
親文字とルビであえて異なる書体を採用している場合も要注意。
傍点が妙に大きくて目立ちすぎると感じるときは、「Q下ゲ?」と疑問出ししてもよいでしょう。

ルビも意識する

国語教材では、熟字訓はグループルビ、熟字訓以外の漢字はモノルビが原則。原典のルビの振り方は無視します。
拗促音はステにするパターン、拗促音を含め全てナミにするパターンの2種類があります。編集方針に従ってどちらかに統一されていなければなりません。
主に古文内の人名(例:みなもとのよしつね)の「の」を字間ルビにするか否かも編集方針に従って統一します。

行頭禁則も意識する

一般的な書籍ではほとんどベタ組で気にしないようですが、教材では、拗促音や音引きなどが行頭に来るのを避けるパターンが多いと思います。編集方針に従って、必要であれば行頭に来ないよう調整指示をしておきましょう。

正字も意識する

教科書準拠物なら、教科書の漢字に合致しているかどうかの確認だけでOK。
それ以外の教材の場合は、原典ではなく編集方針に従います。方針が定かでないときは、通常の教材と同じ観点でチェックすればよいでしょう。教材が異なっても正字にする漢字・しない漢字はほぼ共通していますので、それをベースに。指摘するときは、鉛筆でどうぞ。
(【予め正字にする漢字が決められている場合】Word原稿なら、目視よりワイルドカードを使ったほうが圧倒的に速くて正確です!)
特殊な正字は、ほかの漢字と比べてやや太めの線で印刷されますが、技術的に致し方ないことらしいので、多少の違和感は許容します。あまりに気になるときは、とりあえず指摘しておきましょう。若干修正可能な場合もあるようです。

著者も意識する

日本ビジュアル著作権協会(略して日ビ[にちび])に属する著者の作品は、使用料が非常に高額であるため採用しないというスタンスをとることがほとんどです。
本文として転載されているときは許諾を得ているかどうか、一部引用のときは許容量を超えていないかどうかを、念のため疑問出ししておくとよいでしょう。

これらを意識しておくことは、校正フィルターを1枚増やすことにつながります。
この時点で拾えるミスを後工程でも見つけられるという保証はありません。
可能な限り、上記の観点でもチェックしておくとよいでしょう。

●さらにプラス● 原典照合に続いて、設問や解説の表記統一を行う場合
照合時に、原典の表記をできるだけ記憶しておくようにすると、その後行う「設問・解説中に出てくる本文引用の表記チェック」において大変役立ちます。