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トルツメほか赤字の入れ方〔縦組・国語教材応用編〕

トルツメの書き方あれこれ〔縦組・1文字の修正〕 」「トルツメの書き方あれこれ〔縦組・2文字以上の修正〕 」を踏まえた実践的赤字の見本です。
“Word原稿をプリントアウトし、原稿整理した赤字”をイメージしています。
 

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font by きろ字-P


学参(国語)で入れる赤字は、個人差はあれど、およそこういう体裁になります。
坊っちゃん」「っ」がナミに組まれそうな気がするなら、「小さく」と書き添えるか、を青ペンか鉛筆で書いておけば間違いないでしょう。(参考記事→拗音 校正記号 縦書き
一般の赤字見本のペン先は概して太い(0.7ミリ以上ある?)ようですが、国語ならこれくらいがベストだと思います。 (参考記事→辣腕校正者を気取れる赤ペン

 赤字の理想的な体裁の定義

上の赤字を見ながらWord上で原稿を修正すると仮定して、頭の中でシミュレートしてみてください。文脈に沿ってすんなり直せるはずです。 「実例 校正教室」や「校正練習帳1」とはこの点が大きく違います。どう見てもこちらのほうが理にかなっているのではないでしょうか。

 どこに書き入れるか

中学教材は行間の狭いものが多いので、印字の隣に赤字を記入するかどうか迷うところです。平仮名・カタカナならどうにか書けますが、「闇」ほど画数が多くなると、0.28ミリのペンでも厳しいので、引き出し線を使い、上下の近いほうの空白に書くほうが見やすくなります。
が、よくある赤字見本のように引き出し線を思うさま使ってしまうと、(特に原稿整理や初校校正では)赤字がラッシュしてもう書くスペースがない! という事態に陥ることもあるので注意しましょう。

 ルビの注意点

ルビを書き入れる場合は頭に付きのルを添えますが、大量にあるときは鬱陶しくなるため、省略してもOK。ただし、ルビ以外の赤字と区別しにくいほど混沌としているなら、ルビ部分に蛍光マーカーでケイを引いておくなど、見やすくするための工夫をしたほうがよいでしょう。(その際には、「マーカー部分→ルビ」などの指示を忘れずに。)
行間に書くとわかりにくいときは、親文字の右横にケイを入れ、そこから引き出し線を伸ばして示します。ルビの量が少ない場合に有効です。

 行数(ラインナンバー)の注意点

教科書準拠ワークでは、行数が5行ごとに印字されていることがよくあります。見本のような微妙なズレのほか、数行ズレ、数字や級数の間違いなど、組版ミスが多発する部分なので注意深く校正しましょう。
この見本では、直下に目立つ赤字があるため、同時に視界に入りますが、例えば本文の赤字が、このズレ一箇所しかなく、下段の設問に赤字がぎっしり入っていたりすると、いきおい下段に気を取られてしまい、見落とされる危険性が高くなります。 
これを回避するには、

  • 見本のように修正したあと、「ズレ直す」などと大きめの赤字を書き添える
  • 鉛筆や蛍光マーカーでぐるっと大きく丸囲みする

などの方法があります。

 行の増減の注意点

トルツメや挿入により成り行き改行の頭位置がずれるときは、修正後の位置に改行記号を書くのが原則ですが、すでに大量の赤字が入っている場合などは、無理に書かないほうが見やすくてよいと思います。
ただし、その場合でも、行の増減によるレイアウトの乱れについては確認が必要です。
スペースがなくなったときは、本文最終行に出典名を押し込む、逆に余白が多くなった場合は、本文最終行に入っていた出典名を次行へ移動させるなどのほか、問いや解答パーレンが泣き別れになってしまわないかといった点のチェックもあわせて行うようにしましょう。

 赤字の理想的な体裁を実現する

恣意的な書き込みは論外ですが、杓子定規に整えるのがよいともいえません。読みやすく、見落としにくく、誤解が生じにくい体裁になるよう、状況に合わせて柔軟に対応することも校正者の大切な役目ではないかと思います。
現場経験のない(他人の赤字を見る機会がない)在宅校正者は、往々にしてこの点で不十分であり、評価が下がりがちです。独学では困難な部分も多々ありますが、自分の入れた赤字を元にWord原稿を修正し、プリントアウトして赤字照合してみることで、自分の欠点をある程度把握することができます。やる気のある方は、試してみてください。