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校正志望者の“読書好き”が武器にならない理由

「大きくなったら、何になりたい?」と幼子に訊くと、「お花屋さん」などと答える。
大人は、「どうしてなりたいの?」とさらに問う。
すると、こんな返事が返ってくる。「お花が好きだから」。

かわいらしい発想に、大人は「なれるといいね」と頭をなでたりするが、その夢が現実のものになるとは思っていない。子どもはひどく移り気な生き物であるし、“花を眺めるのが好き”と、“花好きが店を構えて販売すること”との間には、大きな隔たりがあることを知っているからだ。

校正職に応募するとき、読書好きをアピールする人は、その懸隔に気づいていないのではないかと思う。花屋が花好きであるのと同じく、校正者が活字を好むことなど言うまでもない。にもかかわらず、読書好きを殊更強調するのは、校正という仕事のエッセンスを理解していない人間であることを自己標榜しているようなものだ。企業が求めているのは、校正者であって、読者ではない。

残念なことに、この手の勘違いをしている人は相当数いると聞く。在宅校正を希望する人に特に顕著のようだが、もっと酷いところでは、内職と勘違いしているような例もあるようだ。応募してきた電話口で、自身の抱える重荷を全て押し付けるかのように、暗い家庭事情を語った人がいたそうである。情に訴えて、どうにか仕事をもらおうという腹だったのだろう。が、いうまでもなく、そういう人は登録にすら至らない。

校正のなんたるかを知っている人は、それが技術職であることを認識している。その一方で、誰にでもできる簡単な仕事だと言い張る人もいるから、先の人のように、なんでも構わない、今すぐ仕事がほしいというのなら、そういう相手を探せばいい。しかし、仕事を軽く見ている人が提示する報酬は得てして安いものである。こんな単発の低報酬案件を幾らこなしたところで、次につながる実績にもならなければ、満足感も得られまい。在宅校正者になりたい人たちの多くが望んでいるのは、こういう形態ではなかろうと思う。

「彼を知り己を知れば百戦してあやうからず」という言葉がある。フリーの校正者を募集している企業がどれくらいあるのか見てみよう。ここにあるのが全てではないが、イラストなどのクリエイター系に比べると、数がかなり限られている。ここから自分の興味や適性、スキルなどに対応したジャンルで絞り込むと何社残るか。万一不採用になった場合、同じ企業には二度と相手にされないと思って臨んだほうがいいだろう。となれば一発勝負。彼と己を知らずしてサイコロを振るのは無謀だ。

以前、応募を急ぐなと書いたのは、そうした理由からである。たぶん、ほとんどの人がイメージしているであろう、“自宅で、腕一本で、やりがいを感じながら、相応の報酬を得る”という希望を実現するには、真っ当な企業と提携し、外部スタッフとして働かせてもらうのが安全かつ確実だ。ただし、ほとんどの企業は、自社の媒体に適合した校正作法を十分に会得している人だけを欲しがっており、そのハードルは低くない。果たして彼らに「読書好き」は有効なアピールとなるだろうか。答えは自明である。