「素読み校正」をしょっちゅう依頼してくる取引相手がおっての。
そのたんびに、「しからば、解き直しも形式チェックも、要らぬのじゃな?」と念を押すのじゃが、必ず「それもお願いします」と言うてくるのじゃ。
「素読み校正」いうたら、流し読み、俯瞰チェックのことじゃろう。
文字と内容ばっかり熱心に追うておったら、レイアウトのズレやら行あふれやら、色の間違いやらを見落としてしまいがちじゃな。
そこで、「素読み校正」の出番じゃ。
読んだり考えたりせず、絵のように眺めることでミスを拾うのがこの校正の目的じゃろう。
わしはそう習うたし、先輩方も皆それを「素読み」と呼んでおるぞな。
じゃが、向こうさんが言うていなさるのは、どうもそげな校正じゃなさそうじゃ。
こりゃいったい、どういうことじゃろう。
ある日、もしやと思うて調べてみた。
素読み(スヨミ)とは - コトバンク
なんと、向こうさんの言う「素読み」は、まっとうな校正用語じゃった!
わしの習うた「素読み」の意味が載っておらん。
はて、そんなら眺める校正のことは、なんと言うんじゃろうか……?